李可染で過ごす

店で食品だけを買っていたOが「C」での買い物だけを目当てに来店するケース「試食」「お試しサービス」の注目度が一段と高まっている。
事前に使ってもらい、商品を購入するかどうかを決めてもらう販売手法は極めて泥臭く、古典的だ。 商品やサービスに関する情報がネットや雑誌などから容易に手に入る時代に逆行しているようにも見える。
だが実際に触り、使ってみることは、実はリアル(現実)な世界で五感に訴える今風のマーケティング手法である。 人間の死後に需要が発生する葬儀。

せめて生前に自分流の葬儀や、自分好みの墓石を選んでおきたいという人が増えているという。 墓石販売大手のNはRと呼ばれる生前の墓石販売に力を入れ、実際、取扱件数の約8割を占める。
同社が月に2、3度開催する模擬葬もいつも盛況だ。 死んでから悔やまないように、がうたい文句で、「様々なサービス、商品内容を試してその中から決めてもらう」(F取締役霊園事業本部本部長代行)。
消費に好転の兆しが出てきたとはいえ、消費者はなお商品やサービスの購入に慎重だ。 財布のヒモを緩めるには何かのきっかけが必要だ。
IのS会長は「試食サービスは店として売る自信のある商品をアピールして、消費者の背中を押す効果がある」と話す。 セルフ主体の同社だが、接客サービスに力を入れる。
消費者と商品との距離を短くし、試食という体験でさらにその距離を無くしてしまう。 新製品の場合、試食の有無で販売実績が1割ほど差があるという。

「無印商品」を展開するR(東京・池袋)は、カーテンの貸し出しサービスを始めている。 店内の照明は、消費者の家の照明と異なり、色合いなどが微妙に異なって見える。
実生活で、試しに商品を持ち込むことで失望感を抱かせないようにする。 ネットなどの進展で商品情報の入手方法が多様化し、消費者の商品選択は容易になったかに見える。
しかし、現実には、情報の氾濫を招き、消費者の選択眼を鈍らせてしまう面もある。 その点で、試食やお試しサービスは消費者をリアルな世界に引き込むことになる。
消費者本人が体験することで商品やサービスの評価を下せる優位性がある。 所得が伸びず、消費活動が委縮する中では、初めて目にするモノに対して、どうしても憶病になりがちだ。
限られた予算で、満足のいく買い物をするためにはじっくりと商品を見定め、無駄金とならないような消費行動をとるのはいたしかたない。 そこを突き破るのがやはり、試食やお試しだ。
消費者の心理的な抵抗感や不安を取り払い、商品購入時の垣根を低くする。 現在の経済環境下で、リスクを嫌う消費者にとっては有効な手段といえる。
脱皮を繰り返すロングセラーO、P、C、F…。 それまでなかった斬新な商品を市場に送り出し、かつロングセラー商品に育ててきたO製薬。
製薬会社ならではの科学的裏付けと、時代に適合させていくマーケティング手法が、需要を次から次へと掘り起こし続けるロングセラーを生む原動力だ。 200ミリリットルといえば、のどが渇いていれば一気に飲み干してしまう量だ。
この少容量サイズの商品発売で、誰もが知るロングセラー商品が新たな推進力を手にした。 年間販売額(小売りベース)が1500億円に達し、2004年に発売25年を迎えたPである。

O製薬が2002年4月に売り出した200ミリリットルサイズのペットボトル。 一時は生産が追いつかないほどで、東京・渋谷のランキングショップ「A」の飲料新製品の販売記録を大きく塗り替えた。
飛びついたのは女子高生やO、さらには中高年の女性たちで「かわいいうえに持ち運びに便利」というのが理由。 500ミリリットルサイズがペットボトルの主流になって久しいが「常に携帯したと「ハンドバッグに入るサイズがほしい」などの潜在需要を掘り起こした。
500ミリリットル入りペットボトルの無糖茶飲料が1990年代に登場して以降、職場などで時間をかけてちびちびダラダラ飲む「ちびダラ飲み」が定着。 さらに健康志向、機能性が強く求められる時代背景にもフィットした。
「のどが渇いていなくても水分を補給したい。 そんなニーズが広がっており、可能性があるとみた」(T製品部P・ホットポーブランドマーケティングマネージャー)・価格は110円(税込み)。
500ミリリットルペットボトルが150円、350ミリリットル缶は110円だから割高だが、消費者が価格を気にするそぶりはない。 実は、容器展開はPの歴史でもある。
味、成分も発売以来変わっておらず、容器に工夫を凝らし新しい需要を取り込んできた。 1985年、独特な広口びんの570ミリリットルサイズの商品を発売。
外国人女性を中心にした高級イメージや、I氏を起用して知的なイメージを強調していたCMにもTを登場させ、身近な商品に変身を遂げた。 バブル崩壊後の家庭回帰傾向が見え始めた1990年には家庭向けに、5リットルサイズのペットボトルを発売。

2002年にはさらに家庭用の需要を取り込もうと2リットルペットを売り出した。 一方、携帯性ということでは1997年に500ミリリットルサイズを、そして今が200ミリリットルだ。
Tマネージャーは「誰もが知っている商品だからこそコンセプトを変えず、しかし新しさを失わないよう時代に即した仕掛けが重要」と言う。 Pから3年後に発売したCも、五大栄養素が手軽に摂取できる「バランス栄養食」との商品コンセプトを変えずに、250億円規模の商品に育てた。
容器で需要を創造したPに対し、こちらの工夫は形状と味。 当初の缶入りドリンクタイプとブロックタイプに、2001年にシナモン味のスティックタイプを追加。
2002年9月には口栓付きアルミパウチ容器に入ったリンゴ風味のゼリータイプの商品を発売した。 アルミパウチ入り飲料はスポーツシーンを想定した競合商品も多く、風味を良くしてデザート感覚で手軽に飲んでもらう戦略に出ている。
研究所がアンテナO製薬のロングセラー商品を生み出す原動力のひとつは、製薬会社ならではの科学的データの裏付けにある。 佐賀県にある佐賀栄養製品研究所。
「栄養と運動」のかかわりを軸に、25人の研究員が数多くの新商品を送り出してきた。 既存商品が鮮度を失わない秘密も、実はここにある。
主力商品ごとに置くブランドマネジャーと連携、時代の流れに即しながら既存商品の有用性の裏付けを調べ、広告・宣伝も連動する。 アプローチに力を入れる。
消費者向け商品のマーケティングを担当するK俊也製品部長は「ブロックは高校生から30代、缶入りは食が細くなってきた高齢者、スティックは女性の支持が高い。 新しいニーズへの切り口を常に用意していくことが幅広い支持につながる」と言う。
2001年から2002年にかけて話題を集めたエコノミークラス症候群。 研究所は素早く症例と水分補給の関係を分析した。
実験室レベルでのデータ収集に続き、実際にジャンボジェット機をチャーター。 ミネラルウオーターと比べながらPの有用性を証明したが、この研究はヒットした200ミリリットルサイズ誕生につながっているという。
「長時間の乗り物での移動や会議の場で少しずつPを飲む効用が浮き彫りになったわけで、ここを訴えることにした。

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